お知らせ

お知らせ 堀内 朗先生 イグ・ノーベル賞受賞記念講演会が開催されました。

伊南行政組合 昭和伊南総合病院 堀内 朗先生
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伊南行政組合 昭和伊南総合病院 堀内 朗先生(内科診療部長。消化器病センター長)が、2018年度イグ・ノーベル賞 医学教育賞を受賞されました。アポプラスステーション主催で、長年にわたり大腸検査の患者負担の軽減を目指し、カメラを体内に挿入することで受ける苦痛を少なくするための研究に取り組まれてきた堀内先生をお招きして受賞講演会を実施いたしました。 講演要旨は下記の通りです。

受賞理由は、「座位で行う大腸内視鏡検査 - 自ら試してわかった教訓」として、堀内先生自らのお尻で、座ったままの姿勢で大腸内視鏡検査を受ける方法を研究した成果が評価されました。9月13日のハーバード大学サンダース講堂で行われた受賞講演、15日のマサチューセッツ工科大学で行われたイグ・インフォーマル レクチャー、および9月22日に東京ドームで開催された「イグ・ノーベル賞の世界展」の様子を発表スライドと会場の写真を交えてご紹介いただきました。インフォーマル レクチャーでは、「The way to “no colorectal cancer” 大腸癌死ゼロへの道」として、増加している日本の大腸癌に対して、大腸内視鏡による受診により大腸癌による死亡を無くしたいという想いを熱く語られていました。


イグ・ノーベル賞受賞 式典について語る堀内 朗先生 イグ・ノーベル賞受賞 式典について語る堀内 朗先生

続けて今回の受賞に至った「Our Goal」として提唱されている「内視鏡検査のハードルを下げて胃癌・大腸癌死 ゼロ達成」に向けての取組についてお話いただきました。 胃癌予防として長野県飯島町では、ピロリ菌検査と除菌を町レベルで実施し、成人式ではピロリ菌検査を贈呈する取り組を紹介されました。 大腸癌に対しては、予約無しで当日検査を受けられ、検査後は60分で検査前の状態に回復できる鎮静剤を用いた駒ヶ根方式を確立しました。11年間15万症例のデータを現在Clin. Gastroenterol Hepatol.にオンラインで掲載中です。 また、大腸癌に対しては、米国で2000年代より取組まれていたクリーンコロン キャンペーンを元に、2008年より取組んできました。これは、米国で50歳になったら大腸内視鏡検査を受け、ポリープの摘除まで行うキャンペーンで、化学療法の進展と合わせて大腸癌の発生率抑制、大腸癌による死亡率減少に大きな貢献をしています。日本で一般的に行われている高周波切開凝固装置を用いたスネアポリペクトミーでは、遅発性出血のリスクは予測できず、またワーファリンが投与されている患者さんは服薬を中止し、ヘパリンに置換した後に行うことが推奨されています。米国DDWでDr. Douglas K Rexによる10mm以下のポリペクトミーは基本的には焼却せずに、機械的に摘除するコールドポリペクトミーの発表を知り、2008年より鉗子によるコールドフォーセスポリペクトミーとスネアを用いたコールドポリペクトミーを行ってきました。この手法では、ワーファリンを投与されている患者さんであっても、ほとんど出血が無く、遅発性出血が少ないことが判明しました。2013年に医師主導治験の結果を論文として発表し、その後多くの先生の追試により有用性が確認され、2017年の大腸検査学会で教育講演を行いました。鎮静剤とコールドポリペクトミーを用いることで、クリーンコロンによる大腸癌死ゼロの伝道師になれれば幸いと取組んでいます。


今後の研究について語る堀内 朗先生 今後の研究について語る堀内 朗先生

現在は、高齢の嚥下障害者に対して胃瘻を作ることを遅らせる、作らずに最後まで看取れないかというテーマに取組んでいます。経鼻内視鏡を用いて嚥下機能検査を行い、兵頭・駒ヶ根スコアに基づいた機能評価と嚥下が可能なゼリー(ゲル化剤)による経口摂取を出来る限り継続することで、胃瘻を必要としない世の中を目指しています。 最後に「内視鏡は日本の文化であり、特殊な技術は既に世界に発信していますが、国を動かすような技術を発信したい」というメッセージで締めくくられました。


伊南行政組合 昭和伊南総合病院 堀内 朗先生
伊南行政組合 昭和伊南総合病院 堀内 朗先生

製薬会社、MRに対して「医療者への対応が難しくなってきていますが、皆さんがもたらす情報は医療者にとっても重要であり、あきらめずに伝えて欲しい。同志としてどなたの意見も聞きたい。」というメッセージをいただきました。当日は、製薬会社、弊社CSO、CRO部門を含め100名以上が聴講し、「胃癌、大腸癌による死亡ゼロ」「胃瘻を必要としない世の中を目指す」という情熱を持って地域医療に貢献されている堀内先生の真摯な姿勢に大きな共感とともに盛大な拍手で終了いたしました。